いまさら マクロス プラス 第2巻

現在考え得るかぎり究極のアイドルといえるバーチャリティ・アイドルは、観客全員の腕にまかれたブレスレット型モニターによって集められた心理情報をダイレクトに舞台上にフィードバックすることができます。シャロン・アップルの姿が、顔はもとより、形態まで変様したとしても驚くにはあたらないでしょう。その視覚イメージは、その瞬間にすべての観客が望んだものであることはもちろんですが、声や仕草、サブリミナルなどの視覚効果、音響のすべてによって完璧にバックアップされたものなのです。

BDIによりパイロットの思考で操作することができYF-21が引き起こした事故。ミラード大佐はガルドの報告に疑問を感じ、ワース医師にガルドの調査を命じました。

コンサート会場では、舞台中央のプロジェクターから、ほとばしる光と映像の擬似空間に観客たちは酔いしれていました。何万人という観衆の前で、シャロンは変様をくりかえします。女性のイメージから、時の支配者である女神へ、人魚へ・・・場内の興奮は絶頂に向けて引き上げられ、ステージ上ではコケティッシュな少女が唄っていました。興奮に支配されたかにみえるコンサート会場で、ちょっとした事件がおきていました。会場の片隅からイサムの乗機YF-19の設計主任、自称「ハッキングおたく」のヤン・ノイマンがシャロンへのハッキングを企てていたのでした。不審なコードの侵入に、場内を監視カメラがサーチします。そして、そのレンズに、ヤンとイサムの姿が映るのでした。

ハッキングにより目の前に訪れたと思われたシャロンに、ヤンはうっとりと両手を伸ばしますが、次の瞬間、シャロンはヤンを避けて隣のイサムに近づくと、ゆっくりと唇を近づけてきたのでした。シャロンの行動は、感情回路としてヴァーチャリティ・アイドルに組み込まれていたミュンの思考によるものでした。プロデューサーとは名ばかりで、シャロンを構成するシステムの生きた部品がミュンの仕事だったのでした。成功裡に終わったコンサートの後、メンタルの弱さを指摘されたミュンは一人ホテルの部屋で悩むのでした。

イサムは、修復が完了したYF-19を駆って大空に舞い上がります。空力限界高度まで48秒の高性能に感動しながら、管制を無視して気ままな曲芸飛行を続けます。大空に竜鳥の姿を描きながら。その後、YF-19チームの快進撃が始まりました。様々なテストをYF-21より高い評価でこなしていきます。その一見無謀な操縦は、ミラード大佐曰く「挑戦と無謀とバカをポケットに入れている」と評価されます。

ある夜、ミュンは旧友のケイトと会っていました。酒を飲みながら家族を紹介するケイト。カラオケボックスでケイトに歌うことを勧められたミュンは、歌をやめたことを話した。その様子を不自然に感じたケイトは、善良な気遣いからイサムを電話で呼び出します。だが、ケイトがうっかり口にしたガルドの名をきくと、イサムは荒々しく受話器を叩きつけたのでした。また、イサムとガルドがカラオケボックスに到着する直前に、ミュンは帰ってしまうのでした。

「あたしはね、あんたの歌なんて大嫌い。自分の歌も大嫌い。」コンサートが終わった後の、人気のないメイン・コントロール・ルームで、ミュンが呟く。「もう、誰にもあいたくない・・・どこかへ消えちゃいたい」とうずくまりミュンが呟いた言葉は、暗くガランとした部屋の中に吸い込まれていった。誰もいないはずの部屋で、いつの間にか淡い光に包まれたシャロン・アップルがミュンの背後に佇んでいたのでした。

同じころ、イサムはニューエドワーズ基地の自室で一人黄昏ていました。そこに「30 フン ゴ コンサート カイジョウ カサイ ハッセイ」と不審なメッセージが送られてきました。同じメッセージはガルドの元にも届けられました。ガルドがコンサート会場に駆けつけた時、会場の通路はすでに煙が充満していました。扉を破りコントロールルームに入ると、ミュンは確かにそこにいました。気を失っているミュンを抱え上げて出口へ走るガルド。その背中に思い非常扉がおちてくる。

ミュンが意識を取り戻したのは、ホテルの自室でした。安心して帰ろうとするガルドだが、ミュンは車のキーに伸びたガルドの手に、自分の手を重ねあわせた・・・。

ミュンを手に入れた。ガルドはそう確信した。「おまえには、もう指一本ふれさせん」と、火事のあった次の日の朝、ガルドはイサムにそう宣言した。あとは、比較試験で、YF-21の優秀さを証明するだけだ。ガルドには自身があった。

決着を急ぐイサムはガルドを挑発していく。YF-19とYF-21は所定のコースを外れ、市街地演習場で格闘戦に入るのでした。プロレスのような格闘戦の中、イサムのYF-19はガルドのYF-21を追い詰めていきます。YF-21の右腕を破壊し、勝負あったと思った次の瞬間、YF-19はその場にないはずの実弾によるダメージを受けたのでした。